米朝落語全集 増補改訂版 第二巻

24編の噺が収められた、米朝落語全集の第二巻。映像や録音でもおなじみの「親子茶屋」「景清」「かわり目」「京の茶漬」「くしゃみ講釈」などの名作・傑作はもちろん、「怪談市川堤」「鏡屋女房」「釜猫」「雁風呂」「紀州飛脚」といった珍しいネタもバランスよくちりばめられ、バラエティ豊かなラインナップが楽しめる。中には、現代の感覚にそぐわない噺もある。「菊江仏壇」などはその最たる例で、米朝師も解説で「この噺がむつかしいという一番大きな原因は、この作品自体が、『たちぎれ線香』のような名作ではないということです」とクールに分析している。しかしだからと言って切り捨てずに、活字として残しているところが、また米朝師らしくもある。つまり、資料的価値にかなり目配りがされているということだ。また、これは米朝落語の…というより上方の古典落語の特徴のひとつだと思うが、歌舞伎、浄瑠璃、講談など、ほかの芸能が絡んでくる噺が多くある。往々にしてハメ物（鳴りもの）と連動して、それらをきっちりと聴かせるためには、落語家の範疇を超えた知識とスキルが求められるだろう。そういう文化を今に伝える記録としても、本シリーズが持つ値打ちは大きい。