新校注 萬葉集 (和泉古典叢書)

和泉古典叢書は八代集関係のものは校注・現代語訳も付いているが、この萬葉集の場合は本文及び訓み下し文があるだけで、校注・現代語訳は無い。つまり佐竹昭広氏等による塙書房版の本文篇や鶴久・森山隆両氏による桜楓社版「萬葉集」とほぼ同じような構成。上代特殊仮名遣の甲類・乙類は（原則カタカナ表記の訓み下し文の）乙類の字のみ平仮名で表記するという方式だけど、甲類は普通にカタカナ表記なので判りにくい印象。時代別国語大辞典上代編や古語大辞典のように当該音の左右に傍線を添える方式の方が判りやすいと思うが。訓みは概ね多くの研究者の訓みを踏襲しているが、中には中皇命のNo.10の歌を「ワガよモシレヤ（吾代毛所知哉）」と訓んだような他の多くの研究者とは異なる（旧訓に従った）訓みをしている所もある。いずれにせよ、ハイアマチュアあるいは研究者を志向する人向けの本で、一般向けの本とは言えないだろう。